ティースバンクと歯髄幹細胞バンクの違いについて、詳しく説明しています。
不要な歯を冷凍保存するティースバンクと、不要な歯から歯髄を取り出し培養したものを冷凍保存する歯髄幹細胞バンク。
どちらも必要な時に取り出して使用しますが、仕組みや費用、そして使用方法が違います。
いざという時のために利用したいと考えている方は必見です。
ティースバンクとは?
【歯の銀行】という意味を持つティースバンク。
抜いた歯を、磁場を使用した特殊なフリーザーパックで冷凍保存することで、将来必要になった時に移植することができるという技術です。
2004年に広島大学で開発され、今は有限会社スリーブラケッツという会社が技術を引き継いでいます。
現在、このティースバンクに登録している歯科医院は全国に476件あります。
ティースバンクのしくみ
①感染症の血液検査をします。
②検査に問題がなければ、親知らずや矯正で不要になった歯を、提携している歯科医院で抜歯します。
③医院からスリーブラケッツのティースバンクに送ります。
④歯は冷凍保存され、将来歯の治療が必要となった時、冷凍している歯を戻して移植の治療に使用します。
将来、虫歯や欠損などで歯を抜かなければならなくなった時、あらかじめ保存していた自分の歯を再利用できるというのはとても便利なシステムです。
ただ、自分の歯だけにしか対応していません。
そして、歯をそのまま再利用するため、仮に奥歯を冷凍保存しているとすれば奥歯にしか使用できません。
前歯に移植したいと思っても、歯の形が合わないのです。
ティースバンクにかかる費用
ティースバンクは歯を預けるシステムのため、初期費用と継続費用が必要となります。
初期費用は、血液検査3万円+歯の保存20年で1本につき5万円+歯の検査1本につき4万円+輸送費です。
その後、保管の延長は20年ごとに4万円(最大40年保管)となります。(料金参照:有限会社スリーブラケッツ|歯の銀行に関する説明と同意)
歯髄幹細胞バンクとは?
先ほどお話したティースバンクは、歯をそのままの形で冷凍保存する技術です。
一方、歯髄幹細胞バンクとは、歯をそのまま冷凍保存するのではなく、歯の中から“歯髄”と呼ばれる神経を取り出して培養したものを冷凍保存する技術です。
神戸にあるアエラスバイオ社が行っています。
歯髄幹細胞バンクのしくみ
①感染症の検査をした後、提携している医院で抜歯をします。
②抜いた歯は、歯科医院から歯髄幹細胞バンクに送ります。
③歯髄幹細胞バンクに送られた歯から、歯の中から歯髄を取り出します。
④歯髄を培養して冷凍保存します。
⑤必要になったときに冷凍していた細胞を取り出し、歯の再生治療に使用します。
歯髄幹細胞バンクにかかる費用
保管期間が10年で、費用初期30万円(品質管理費、輸送費など含む)+抜歯前の血液検査代+抜歯代です。
その後、保管の延長は10年につき6万円となります。(料金参照:アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク | アエラスバイオ株式会社)
ティースバンクと歯髄幹細胞バンクの違い
この二つは一見すると同じように見えますが、違いがあります。
ティースバンクは歯をそのまま冷凍保存して、将来必要なときに移植するという方法。
事故や虫歯で失った歯1本に対して預けていた歯1本を使用することになり、形があわないと移植できません。
一方、歯髄幹細胞バンクは神経を抜き取って培養して冷凍保存するため、1本の歯で複数の歯に対応できます。
また、現在は自分の歯にしか対応できませんが、近い将来は二親等以内(子供から祖父母)までの親族への移植がOKとなる見込みです。
そして、歯髄幹細胞は非常に再生力が高いため歯だけでなく、心臓や脳の病気、毛髪への利用にも応用できるといわれています。
そのため、ひとまず冷凍保存しておけば、将来的に価値が高まるのではないかと私は考えています。
歯髄幹細胞は、ある意味“究極の予防歯科”
これからの時代、親知らずや矯正で不要な歯を抜歯をするなら、そのまま捨ててしまうのはあまりに勿体ないです。
歯髄幹細胞バンクに預けておけば、歯だけでなく病気にも使える可能性があるので、将来への安心感につながります。
3か月に1回、歯の定期健診を受けるというのは、予防歯科に対する意識が高い方ならすでに実行されているかと思います。
今後はそれだけでなく、不要になった歯があれば歯髄幹細胞バンクに預けて冷凍保存することをおすすめします。
健康寿命が長くなっている社会で、歯髄幹細胞バンクは“究極の予防歯科”になると私は考えています。