歯髄幹細胞バンクを利用するには?手順や歯科医院の選び方をご紹介

歯髄幹細胞バンクの利用を考えている方に向けて、「どんな歯を預ければいいのか」「提携している歯科医院の選び方」について、わかりやすく説明しています。

歯髄幹細胞バンクってどんなサービス?

乳歯は冷凍保存する時代?!歯髄幹細胞バンクとはにてご紹介しましたが、歯髄幹細胞バンクという事業が今、非常に注目を集めています。

歯髄幹細胞バンクとは『親知らず、矯正、抜けた乳歯などの不要な歯の神経(歯髄)から幹細胞を取り出し、培養して冷凍保存する』という技術を用いた保管サービスです。

この技術で預けた歯髄幹細胞は、治療が必要になったときに取り出して使用します。

歯髄幹細胞をつかった治療はすでに始まっている

歯の神経を培養して冷凍保存するなんて遠い未来の話ように聞こえますが、20年ほど前から歯髄幹細胞を用いた歯の再生医療は研究され続けてきました。

そして、歯髄幹細胞をつかった歯の再生医療はもう研究段階の話ではありません。

2020年の9月から、実際にいくつかの歯科医院では患者さんに向けた歯髄幹細胞を用いた治療がはじまっています

抜けた歯ならどれでも冷凍保存できる、というわけではない

「抜けた歯ならどんなものでも使えるの?」「歯が抜けたら歯髄幹細胞バンクに送ればいいのかな」と思われるかもしれませんが、残念ながら違います。

歯髄幹細胞バンクを実施しているアエラスバイオ社の場合では、以下のような手順で歯を預けます。

①提携している歯科医院で不要な歯を抜歯する

②歯は専用の容器に入れて、歯科医院からアエラスバイオ社に冷蔵で輸送する

③歯の中から歯髄を抜き取って培養して冷凍し、半永久保存する

「歯が抜けたから歯髄幹細胞バンクに送ろう」ではなく「この先、抜歯の予定があるから歯髄幹細胞バンクと提供している歯科医院に通っておこう」という考え方が重要なのです。

歯髄幹細胞バンクは究極の予防歯科である

歯髄幹細胞バンクで培養して冷凍保存した歯髄幹細胞は、将来、歯の治療が必要になったときに使用できます。

また、培養しているため使い切りというわけではなく、複数の歯にも対応できます。

現在のところは歯髄幹細胞を預けた本人の治療にのみ活用できますが、近い将来には兄弟・親・祖父母といった二等親までの親族にも移植できるようになると言われています。

つまり、孫の歯髄幹細胞を両親だけでなく、おじいちゃんおばあちゃんの治療にも使えるようになるということです。

さらにゆくゆくは歯の治療だけでなく、アルツハイマーや心筋梗塞、毛髪の治療にも応用ができるようになると言われています。

この歯髄幹細胞バンクには様々なポテンシャルが秘められている、もしもの場合に備えておく究極の予防歯科だと私は考えます。

歯髄幹細胞バンクに預けるならどんな歯がいいの?

特におすすめなのは、乳歯の奥歯です。

再生力が特に高いとされている乳歯ですが、子供の歯はとても小さいので、歯の神経である歯髄が抜けきれないなどのリスクがあります。

そのため、前歯などよりも面積の大きな奥歯が推奨されています。

奥歯が抜けるのはだいたい10歳くらい、およそ小学校3~5年生くらいの年頃ですので、お子さんをお持ちの方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?

もちろん、大人だからといって歯髄幹細胞バンクを利用できないというわけではありません。

大人の場合は、矯正や親知らずで不要になった歯を使うのがいいでしょう。

今までは捨てるしかなかった不要な歯が、将来の治療に役立てるかもしれないというのは嬉しいことですね。

なお、歯の冷凍保存サービスには、歯髄幹細胞バンクと似ているけれどサービス内容の違う「ティースバンク」というものがあります。

詳しくはティースバンクと歯髄幹細胞バンクの違いとは?の記事にて書いていますが、歯髄幹細胞バンクとは別物となります。

簡単にいうと、ティースバンクは歯をそのままの形で冷凍保存するというのに対して、歯髄幹細胞バンクは歯から神経を抜き取って培養して冷凍保存する、というものです。

かかりつけ医を歯髄幹細胞バンクと提携している歯科医院にしよう

歯髄幹細胞バンクの利用を考えている方は、かかりつけ医を歯髄幹細胞バンクと提携している歯科医院にしましょう。

そして、普段からメインテナンスなどで通いながら、歯髄幹細胞バンクに歯を預ける場合の説明を受けておきます

なぜ事前に説明を受けておくかというと、いざ抜歯となったタイミングで慌てて歯髄幹細胞バンクの話を聞いても、きちんと理解できるだけの余裕があるとは限りません。

心に余裕のあるときに説明を受けることで理解を深めることができますし、わからない点は質問することで不安を解消することができます。

提携している歯科医院を調べるためには、家の近所にある歯科医院のホームページを調べたり問い合わせしていては時間がかかります。

というのも、歯髄幹細胞を使った治療は2020年の9月にはじまったばかりですから、提携している歯科医院もまだ少ないのです。

アエラスバイオ社の提携歯科医院一覧では、歯髄幹細胞バンクのアエラスバイオ社と提携している歯科医院の一覧が掲載されています。

通える距離に提携している歯科医院があれば、ぜひ問い合わせてみてくださいね。

今はまだ数が多くありませんが、アエラスバイオ社は提携する歯科医院を全国で300件くらいまで増やしていきたいと意気込んでいますから、将来的には1都道府県につき5件~10件くらいまでは増える見込みです。

まとめ

歯髄幹細胞バンクを利用したい人は、まずはかかりつけの歯科医院を歯髄幹細胞バンクと提携しているところにしましょう。

そしてメインテナンスで歯科医院に通いながら、歯髄幹細胞バンクに預けるまでの流れや説明を聞いて、抜歯の際に備えておきましょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

丹羽浩之

兵庫県神戸市在住の私(丹羽浩之)は仕事では長年、全国の歯科医院と接点を多く持ってきており、2児(小学生と幼稚園児)の父親でもあります。
そして親として、子供たちに健康の大切さを伝え、歯を大切にする習慣を自立的に身につけてほしいと願っています。

なぜならお口は「食べられる、話せる」からはじまり、「歩ける、話せる」にも影響し、また全身の病気や慢性疾患になるリスクも大きく変わってくるためです。
しかし、こんな大事なことを「どこからもきちんと教えてもらう機会がない」、これが日本の実情です。

仕事柄、私を知る人から「(自分の地域で)おすすめの歯科医院はないですか」「どうやって自分にあった歯科医院を選べばよいですか」といった相談を数知れず受けてきました。
そして、ほかにも同じような悩みを持っている人たちが大勢いるのではないかと思いました。

そこで、私のこれまでの経験値を含めた情報は、そのような方々のお役に立てるのではと思いこのサイトを立ち上げることにしました。
また、このサイトでは予防歯科の情報提供のあり方として、「患者の立場」を最も大切に考えています。

仕事では歯科医院の経営コンサルタントとして15年間で500件以上の歯科医院に関わってきました。
その中で、日本人の予防歯科(定期健診)への関心の低さが、常に課題としてありました。

予防歯科に通う習慣がある人とそうでない人とでは、人生における生活の質が全く違ってくることを医院に通う患者さんを通じて知りました。
なお、このサイトで医学的に正確な情報が必要な部分については、私が15年に渡って信頼を築いてきた歯科医師、歯科衛生士、医師の方々にご監修して頂いたり、引用元を明記した上で情報提供します。