これは私が歯科界に関わる15年程前から、一部の歯科医師たちの間で熱心に言われていたことです。 それ以外では、このことを日本で言う人はいなかったと思います。 もしいたら、当時では変人扱いですね。 しかしお口と全身の健康の関係は、なかなか伝わりませんでした。 その理由は、「それを歯医者さんが言えば、歯科医院の患者さんが増えるからですよね」という患者さん側の思いもあるからだと思います。 そこに利害関係を少なからず感じてしまうためです。 しかし最近では、同じことを歯科医師以外の方々が熱心に言われるようになりました。 それは医者であり、国です。 今回は、国が指針として掲げた「歯と全身健康」について、その背景なども含めてお伝えします。
メタボリック症候群は歯と密接な関係があるって知ってました?
(出典:伊藤裕)
これは、「お口の健康」があらゆる病気にドミノ式に連鎖していくことを分かりやすくあらわしたメタボリックドミノと呼ばれるものです。
一体、誰が作成したと思いますか?
- 歯科医師
- 厚生労働省の役人
- 歯科用品を販売する大手メーカー
- お医者さん
いずれも違い、答えは大学の医学部の教授の先生です。
実はこの「歯と全身の病気との関係」は15年以上前から、歯医者さんの間では当たり前のように学会などで発表されていました。
もちろん、患者さん向けに説明していた歯科医院もありましたが、なかなか広まらなかったのが実情です。
その証拠に、歯科検診で歯科医院に通っている人はまだ10%程度と言われています。
あなたの周りにも歯の定期検診に通い続けている人は・・それほどいないですよね。
2、3年程前からは歯医者さん以外でも、メタボリックドミノのように「歯と全身の病気との関係」を伝える人が増えてきました。
そしてテレビや雑誌、Yahoo!ニュース等のメディアでもよく取り上げられるようになり、一般の人の認知がどんどん進んでいます。
15年以上前から歯科検診の大切さについて伝える努力をしてきた歯科医院にとっては、正直これらは歓迎されることであるものの、悔しいことでもあるはずです。
なぜなら、「自分はずっと言ってきたのに・・」と複雑な胸中にもなるからです。
冒頭の「メタボリックドミノ」ですが、これは慶応大学の医学部教授である伊藤先生が発表されたスライドです。
これ、非常にインパクトがありますね。
あらゆる病気は連鎖していて、できるだけ上流で食い止めることが病気を防ぐことにつながることを示しています。
体の上流とは何か? つまり【お口】です。
【お口】のケアの方が、【身体】のケアより優先されると言ってしまっているわけです。
【お口】のケアの方が、他の病気に影響する範囲が多いよというわけです。
国による「骨太の方針2019」の中にも、歯と全身健康の関係が書かれているんです
実はこのメタボリックドミノの考え方は、あらゆるところが認めはじめ、指針にしています。
その代表例が我が国、日本です。
例えば、2019年6月に出された政策「国の骨太の方針」の中に、次のような内容があります。
【口腔の健康は全身の健康にもつながることからエビデンスの信頼性を向上させつつ、国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診、フレイル対策にもつながる歯科医師、歯科衛生士による口腔健康管理など歯科口腔保健の充実、入院患者等への口腔機能管理などの医科歯科連携に加え、介護、障害福祉関係機関との連携を含む歯科保健医療提供体制の構築に取り組む。】
(引用:経済財政運営と改革の基本方針 2019 について|内閣府)
どうです、これ我が国の指針です。
このポイントを平たく言えば
ですね。 エビデンスとは証拠という意味で「口腔の健康は全身の健康につながることを国民にしっかり知らせてもっと認知させましょう」と国も言っているわけです。 またフレイルとは衰えという意味で、オーラルフレイルとは日本歯科医師会では「口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、身体の衰え(フレイル)の一つ」と定義しています。 このフレイル対策として口腔機能管理をあげており、お口の中の管理は身体全体の衰えに大きく影響することを国も認めていると言えますね。 まさにメタボリックドミノ的考え方は、すでに国の指針に取り入れられているのです。 そして本来ならこれらは「学校教育に盛り込んで、周知していくことだ」と私は考えています。 なぜなら、若い時にお口のケアの大切さを知り習慣をつくっておかないと、大人になって、高齢になるにつれ、どんどん病気を発症してしまう可能性が高くなるからです。 「勉強したり、スポーツをして一芸に秀でること」と「健康状態を維持する身体をつくること」は、同等の価値があると思っています。 私も二児の父親として、子供たちに望むことで「いつまでも健康でいてほしい」に勝るものはありません。 しかし、子供のころからの周知にはなかなか至りませんね。
厚生労働省からも、『口からはじめる生活習慣予防』という資料(スライド)が公開されています。 厚生労働省の資料なので「小難しいことがいっぱい書いてあるかな」と思いきや、意外と分かりやすい(驚き!)。 このスライドの中では図を使って、お口の健康と生活習慣病との関連性が分かりやすく表記されています。 まあ、先ほどのメタボリックドミノをより分かりやすく詳しく説明しているとも言えます。 今回は、この中から4枚のスライドを抜粋してご紹介しますね。 (出典:口からはじめる生活習慣病予防|厚生労働省) (出典:口からはじめる生活習慣病予防|厚生労働省) (出典:口からはじめる生活習慣病予防|厚生労働省) (出典:口からはじめる生活習慣病予防|厚生労働省) 以上のように、厚生労働省も歯を守ることを強く推奨しはじめています! その背景には「膨らみ過ぎた医療費の削減」という大きな国の命題があることは、言うまでもありません。 この問題を解決していくためには「お口のケア」だと、ようやく!国も指針を固めてくれてのです。 ようやく!というのは、冒頭でもお話したように「歯の健康が全身の健康」に関わることは15年前では、一部の歯科医師だけが言っていました。 そして月日がたち、今では国の骨太の方針、厚生労働省のスライドでも推進することになり、お医者さんまでもがそのことを強く言う時代になりました。 「歯を守ること」は全身健康、命につながることは、もはや歯科医師だけが言っている話ではありません。 大切なので繰り返しますね。 70代の健康上の後悔(雑誌プレジデントの調査)、第1位は「歯科の定期健診を受けておけば良かった」なのです。 若いうちから「スポーツをしておけばよかった」「人間ドックに通っておけばよかった」より後悔が大きいのです。 あなたはいつから歯科検診をはじめますか?
厚生労働省も口腔ケアを推進しはじめています
1)歯や口と全身健康との関係
2)むし歯と歯周病の違い
3)歯の喪失の二大原因
4)歯と口は健康寿命の延伸に
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