歯科検診に保険適応と保険適応外があるのはなぜ?どうやって判断しているの?

歯科検診(予防歯科)や口腔ケアの大切さが少しずつ認知される時代になりました。

歯の大切さは「噛む」だけでなく、「話す」「かみしめる」などにも影響し、日常生活やスポーツなどの質にも深く関わっています。

しかし、「歯科検診は保険適応されるのか?」という疑問のある人は多いのではないでしょうか。

歯科医院のホームページなどを拝見すると、保険適応している医院もあれば、自費診療になっている医院もあり、どう判断すればよいか分かりにくいですよね。

そこで、小難しい法律視点ではなく、患者視点で分かりやすく要所だけをおさえた歯科検診の保険制度についてここでお伝えします。

安心、納得してご自身にあった歯科検診を受けられることにつながれば嬉しいです。

歯科検診は保険適応なのか? 保険外診療なのか? はっきりさせてほしい

ご存じの方も多いと思いますが、歯の歯科検診は、保険適応外です。

しかし紛らわしいことに、例えば「広島市(地域名) 歯科検診」で検索して歯科医院のホームページを見てみると、そのことが明記されていなかったり、中には保険適応と書いている歯科医院もあります。

「それって、一体どういうこと?」と思いますよね。

実は、そこには歯科医院側の事情や理由があります。

結論から言えば、日本の健康保険制度では予防医療に関して、健康保険が適応されることはありません。

疾病名が付かない限りは保険適応されないのが基本ルールのため、歯科検診も保険外診療になるのが通常です。

「実際には保険適応している歯科医院もあるけれど、それは違法なのか?」

正確に言えば違法ではありません。

というのは、そのような医院さんでは疾病名をつけて、健康保険適応している場合がほとんどです。

例えば、歯周病は軽いものも含めると成人の8割がかかっているといわれる病気です(重度にならない限り自覚症状がないため、本人も気づいていないことが多いです)。

そのため歯科医院では例えば「軽度の歯周病」という疾病名をつけて歯科検診を行い、保険適応としているケースが多くあります。

なんだか、ややこしいですね。

ただ、このようなケースは正式には認められないため、保険適応できなくなっている歯科医院も増えています。

その背景には、社会保険診療報酬支払基金にレセプト(診療報酬明細書)を提出し、健康保険負担のお金が歯科医院に振り込まれるのですが、その際に返戻といって「これは保険算定できませんよ」と差し戻されることが増えてきているからです。

その場合は、保険外診療になります。

では、ゆくゆくは全ての歯科検診が保険適応外になるのかというと、そうでもありません。

厚生労働省は、2016年の保険改定により歯周病安定期治療というもの保険適応にしました。

歯周病安定期治療というのは、歯周病を治療した患者さんが歯周病を再発しない(状態を安定化させる)ようにするための治療です。

患者視点からすれば、これは歯科検診とも言えます(あくまで患者視点ね)。

この歯周病安定期治療は、厚生労働省から「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」に認定された歯科医院さんにのみ健康保険適応を認めており、その場合は1カ月に1回の来院でも保険適応されます

これいいでしょ。

歯科医院からすれば、保険で行えるのか自費で行うのかは結構な死活問題です。

もちろん、圧倒的に素晴らしいサービスとして自費診療で提供する自信がある歯科医院さんにとっては、そんなの関係ないのですが。

そのため、この「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」になるための認定を受ける歯科医院は右肩上がりで増えています(厚生労働省の調べ:2017年4月時点、7,031件)。

「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の認定を受けた歯科医院さんでは、この歯周病安定期治療を使って、健康保険適応しています。

もちろん、違反ではありません。

専門的な理由があるとはいえ、患者からすると「歯科検診を保険適応している歯科医院があったり、自費診療にしていたりしていて、意味が分からない」といった不安が生まれるのも当然ですね。

もしあなたが歯科検診にはじめて受診する場合・もしくは治療が終わった後に歯科検診に移行する場合は「歯科検診(予防歯科)は保険適応されるのか? その場合の窓口負担は大体いくらぐらいか」を、通っている歯科医院さんに確認する方が良いでしょう。

保険適応もできるのに歯科検診にあえて自費診療(保険適応外)があるのはなぜか?

「歯周病安定期治療のように、実情は歯科検診として保険適応されるものもあるのに、同じ歯科医院でもなぜあえて自費診療(つまり、保険適応外)の歯科検診もあるのか?」と、このような疑問を持つ方も多いでしょう。

それはズバリ、保険適応だと制約があるためです。

健康保険が適応される医療とは、すなわち最低限の治療です。

「国民は最低限の文化的生活ができるよう保護される」という法のもと、健康保険が適応されているため、なにかと制約があります。

制約とは「1回の診療でできるのはこの範囲のみ」や、「処置の内容はこれとこれのみ」などです。

それは例えば歯科医院が以下のような歯科検診を行いたい場合、該当する保険点数がないため、保険適応ができません。

✔リップクリームをつけて快適に歯石をとれるようにする

✔歯茎のマッサージをして、スッキリしてもらう

といった内容です。

このように来院される方に快適な歯科検診を受けていただこうと歯科医院側が工夫すれば、保険適応ができません(もちろん歯科医院によって点数化できないので、この部分を無償で行っている医院もありますが・・そうなると時間も人件費も増えて、当然、経営を圧迫します)。

そのため、

「健康保険の制約に縛られずに、うちの医院では快適な歯科医療サービスを提供したい」

という歯科医院は、保険適応外の治療を選びます。

自費だからと言って安易に「儲け主義」と判断するのは、違います。

患者さんの望むことを満たそうとすると、どうしても自費でやるしかないわけです。

この点を誤解しないでくださいね。

また、歯科検診60分の内容の中で40分は保険適応可能な内容だとしても、残り20分が保険適応できない内容(例えば、歯茎マッサージ)を有償提供しようとすれば、全てが自費扱いになるのが現在の日本の法律です。

つまり、混合診療は一切、認められていません。

そのため歯科医院側も、保険制度に沿って決められた最低限の処置を行うか、制約を取っ払って独自のサービスメニューを提供するかの二者択一しかないわけです。

このあたりは多くの歯科医院が悩むところなのです。

まとめ

現在の歯科検診の費用については

・軽度の歯周病という疾病名で保険適応

・歯周病安定化治療でも保険適応(かかりつけ強化診療所のみ)

・自費診療(保険適応外)

この3つが現在、混在しています。

これが、患者からすると「歯科検診で保険適応する医院もあればしない医院もあり、分かりづらい」と混乱してしまう理由です。

この違いをしっかりと理解し、あなたに合った歯科医院の歯科検診を受診しましょう。

1アクション
基本的に、歯科検診の保険適応は不可。

かかりつけ強化診療所なら保険適応が可能(再頻度1ケ月に1回)

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丹羽浩之

兵庫県神戸市在住の私(丹羽浩之)は仕事では長年、全国の歯科医院と接点を多く持ってきており、2児(小学生と幼稚園児)の父親でもあります。
そして親として、子供たちに健康の大切さを伝え、歯を大切にする習慣を自立的に身につけてほしいと願っています。

なぜならお口は「食べられる、話せる」からはじまり、「歩ける、話せる」にも影響し、また全身の病気や慢性疾患になるリスクも大きく変わってくるためです。
しかし、こんな大事なことを「どこからもきちんと教えてもらう機会がない」、これが日本の実情です。

仕事柄、私を知る人から「(自分の地域で)おすすめの歯科医院はないですか」「どうやって自分にあった歯科医院を選べばよいですか」といった相談を数知れず受けてきました。
そして、ほかにも同じような悩みを持っている人たちが大勢いるのではないかと思いました。

そこで、私のこれまでの経験値を含めた情報は、そのような方々のお役に立てるのではと思いこのサイトを立ち上げることにしました。
また、このサイトでは予防歯科の情報提供のあり方として、「患者の立場」を最も大切に考えています。

仕事では歯科医院の経営コンサルタントとして15年間で500件以上の歯科医院に関わってきました。
その中で、日本人の予防歯科(定期健診)への関心の低さが、常に課題としてありました。

予防歯科に通う習慣がある人とそうでない人とでは、人生における生活の質が全く違ってくることを医院に通う患者さんを通じて知りました。
なお、このサイトで医学的に正確な情報が必要な部分については、私が15年に渡って信頼を築いてきた歯科医師、歯科衛生士、医師の方々にご監修して頂いたり、引用元を明記した上で情報提供します。