①お金持ちの患者さんを優遇している
②銭勘定が下手である
③お金の話が苦手である
実は、この中のどれもが当てはまります。
ただ、この中でも一番多いのは③です。
そう、歯科医師は、お金の話が苦手なんです。
歯科医師はどうしてお金の話が苦手なのか
その理由は、保険制度の中で生きている職業の人たちだからです。
保険制度というのは、保険証をもっていると実際の診療にかかった費用の1~3割を窓口で支払うという、患者からするとありがたい制度です。
それは歯科医師からすると、「この治療は何点(=何円)」というように、治療費が一律で決まっているものとなります。
値段を一方的に決められてしまうというデメリットはありますが、お金に関して難しく考えずに済むというメリットでもあります。
そのため、お金についての考え方や伝え方を誰からも教わっていない、という歯科医師がいます。
私が歯科医師の方たちと話してきた中で、お金に関して特に感じたのは、次の3つです。
1)患者さんの満足度を優先するため、保険前提で治療している
保険以外の治療(被せ、矯正)の話をすると、露骨に嫌な顔をする患者さんが一定数います。
そのため最初から保険治療を前提に治療していて、自費の話は避けているという人です。
2)「自費は悪!」と無意識に考えている
自費について患者さんに聞かれたら答えるけれど、自ら進んで話はしない。
メディアが自費の話をする医院は悪だと煽ることもあり、自費の話を出すと結果的に悪評になる事があるので避けたいという人です。
3)医療にかかわる人間が儲けを考えるのはよくない、と考えている
治療を儲けありきで考えるのは患者の立場からすると、あまりいい気分とは言えませんよね。
ですが、歯科医療は設備を導入して、人を雇わないといけない業種です。
経営の面でまわるようにしていかなければ、他の商売と同じようにいずれ衰退してしまいます。
儲けというよりも一定の利益を出して、患者さんにいい医療を提供し続けることを考えなければなりません。
これらの理由を踏まえ、歯科医師の多くの方々は、「一応自費の治療はしているけれど、基本的には保険中心でしている、自費の話は極力しない」という選択をしています。
例え患者さんが「白い詰め物でしてください」と言ったとしても、費用のことは言わない・言えない…、そんな歯科医師の方が多くいるのが現状です。
歯科医師に自費診療とお金の話をしてもらうには?
お金の話が苦手な歯科医師というのは、患者さんに対してやさしい方が多いです。
やさしく接することを大事すること自体はとてもいいことですが、患者さんに反論されたり、何か言いがかりをつけられたりということを必要以上に恐れている歯科医師が多いとも言えます。
そしてこういった歯科医師達は、お金の話をすると、今まで患者さんと築いてきた信頼関係が崩れてしまうのではないかと考えています。
では、歯科医師にお金の話をしてもらうにはどうしたらいいのでしょう?
これはずばり、遠慮なく聞いたほうがいいに限ります。
「保険外で何かできることってありますか?」「念のため自費の話を聞いてみたいんですけどいいですか?」というように、私たち患者の方から歯科医師に聞いてみましょう。
自費の話を聞いたり断ったからといって、怒られるということはありません。
もちろん、そんなことを聞いたからといって「面倒な患者だな」と思われることもありません。
そもそも、自費にする人を嫌がるという歯科医師はほとんどいません。
自費の患者さんというのは保険よりも単価が高いですし、丁寧に説明する時間をかけても採算が合います。
そのため、実費で治療をしたい歯科医師は多いんです。
どうぞ気軽に聞いてみてくださいね。
歯科医師やスタッフは自費診療を選ぶ
実際、歯科医院でも自分や家族の治療は自費にするという方は多いです。
なぜかというと、保険治療は最低限の治療であるということを知っているから。
だからこそ、自分や家族の治療は自由度の高い自費にするという方が多くいらっしゃいます。
最初は私もすごく疑問に思いました。
ですが、ほとんどの患者さんが保険治療を選ぶという医院で働く歯科医師やスタッフを対象に「みなさんやみなさんのお子さんの奥歯が虫歯になったときに、自費の診療と保険の診療、どちらにされますか?」と聞いてみたんです。
スタッフを含めて10人いたのですが、そのうちの8人が「自費にする」と言っていました。
治療のほとんどを保険医療でしている医院でも、自分や家族の診療には自費を選ぶ人がこんなに多いんだと驚きました。
歯科医院の人々がお金がからむ診療の話を伝えることにどれだけの抵抗感を持っていて、自分が受ける治療と患者さんに提供する治療の差にギャップを感じているんだな、ということを知った機会でもありました。
国民皆保険制度は本当に国民を幸せにするのか
なぜこのようなギャップがおきるのかというと、やはり日本は保険治療が当たり前だからです。
これは患者さんからすると当然嬉しいんですが、『保険治療は最低限の治療』というように認識できている患者さんはすごく少ないので、歯科医師との間でギャップが生まれます。
一方で、歯科医師の立場から考えるとどうでしょう。
冒頭でお話したとおり、保険制度というのは「この治療をやったら何点(=何円)」というように、1点10円で換算するのでとてもわかりやすいです。
ただ、1年目の歯科医師も、20年のキャリアを積んできた歯科医師も、治療の内容が同じであればまったく同じ点数になります。
これって実は、職人や技術者の世界ではあまりないですよね。
例えば、ITエンジニアでも新入社員と10年目や15年目の社員ではお客さんに提供する価格は違ってきますよね。
技術や経験に関わらず一律で点数が決まっているというのも、保険制度の落とし穴かと思います。
まとめ
・歯科医師のなかにはお金の話が苦手な人がたくさんいる
・お金の話が苦手だからといって、自費をやりたくないわけではない
・患者が治療の種類や保険制度をよく理解して、保険以外の治療がいいのであれば「治療方法について聞いてから決めることはできますか?」と聞く
・患者が納得して治療を受けられることが大切
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