歯科医院の待合室にある【詰め物のメニュー表】、保険と何が違うの?

最近、歯科医院の待合室で「銀歯は危ない」「保険外診療のメニュー」といった動画やスライドをモニターに移したり、冊子やラミネートなどで伝える医院が増えました。

しかし、そもそも保険診療と保険外診療の違いがよく分かりませんよね。

治療内容の違いを理解する前に「そもそも保険が利かない治療とは何なのか、どうして存在するのか」について理解しておかないと、治療の選択肢としても考えにくいものです。

そこで今回は、患者目線で「保険が利く治療、保険が利かない治療」 、そしてそれぞれがどういう位置づけで存在しているのかについてお伝えします。

歯科医院ではじめて自由(保険の利かない)診療の説明をされた場合、ここをまず読んでいただくと誤解なく冷静な判断ができます。

保険が利かない【詰め物の種類】は誰のためのものか

歯科医院の待合室に【詰め物の種類表】とか【むし歯治療をされる方のための診療メニュー】といったラミネートされた1枚ものがよく置いてありますね。

その表には例えば、1本3~12万円の詰め物の種類が絵や写真と一緒に書かれていたりします。

保険で治療してもらえば詰め物でも3千円ぐらいでできるのに、その10~40倍もする詰め物は何のためにあるのでしょうか?

まず、分かりやすいのは白い詰め物ですね。

銀歯は嫌という人のためにあるのは分かります。

しかし、白い詰め物の中でも

  • emax
  • メタルボンド
  • セラミック

などとよく分からない表記がされていて、それぞれ値段が全然違ったりします。

なぜ、同じ白い詰め物なのに、こんなに種類があるのか?普通はよく分かりませんよね。

詳しく説明していきますね。

そもそも保険外診療は何のためにあるのか?保険診療はどういう治療なのか?

先ほど例に挙げた白い詰め物は、保険外診療や自由診療と言われている治療法になります。

自由診療と言えば、代表的なものに美容整形があります。

“保険が利かない“やつです。

まず、保険外診療は何のためにあるのか?について説明しますね。

日本には国民皆保険制度というものがあります(これは普通じゃないんです、アメリカはこのような制度がなく、民間の保険会社に保険をかけるか完全な自由診療です)。

そして、この制度に当てはまらないのが保険外診療です。

では保険の中でできる診療とは何か?

それは最低限の治療です。

歯医者さん以外でも当てはまります。

例えばガン治療のように高度な医療が必要で特別な機器を使う治療や、慢性疾患の治療に使う特殊な機器や薬についてもそうです。

そして日本国憲法には次のような下りがあります。

【憲法】

第二十五条:

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

国は、すべての生活部面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

【国民健康保険法】

第一条:

この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、

もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。

平たく言えば、最低限の治療に該当しない治療は保険外診療というわけです。

歯科で例えるなら、「国で決められたむし歯治療の最低限は銀歯だから、それ以外の詰め物をしたい場合は保険外診療にしてね」ということになります。

この図のように一般的には「保険外診療は特殊な治療で、お金に余裕がある人が受ける治療」と考えている人が多いと思います。

しかし、これは間違いです。

この図のように治療法には保険が利くものから利かないものまで様々で「保険が利く治療はあくまで最低限の治療で問題ない」という人向けの治療である、というのが正しい理解なのです。

保険外診療の値段は誰が決めているのか?

では次に、この保険外診療の値段は一体、誰が決めるのか?についてお答えします。

それは各医院さんです。

値段は医院が自由に決められるのです。

極端なことを言えば1本のむし歯の治療費は1万円でも100万円でも、問題はないわけです。

しかし、保険内の診療はそういうわけにはいきません。

最近では、会計時に医院から受け取る明細書には

初診料      274点

歯科疾患管理料  100点

検査       200点

というように書かれています。

これが保険点数で、この10倍が実際に治療にかかった費用です。

合計点数が1,026点なら10,260円となります。

そして社保や国保の健康保険で3割負担ならその1/3の3,080円が患者さんが医院の窓口で支払う費用というわけです。

これは日本国内すべての歯科医院で共通です。

もちろん、個々の歯科医院が勝手に変えることはできません。

つまり最低限の治療は国で治療費が決められていて、しかも基本3割負担(高齢者は1割とか)しかありません。

しかし、保険外診療の場合は、医院で決められた費用で患者さんは全額負担で、国は1円も負担してくれません。

以上が治療費のルールになっています。

自由診療を治療の選択肢の1つと考えるには「保険が利く治療、保険が利ない治療」の位置づけをまずしっかりと理解することからです。

まとめ

  • 保険診療は最低限の治療と国で決められている
  • 保険外診療(自由診療)は各医院で価格が決められる

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

丹羽浩之

兵庫県神戸市在住の私(丹羽浩之)は仕事では長年、全国の歯科医院と接点を多く持ってきており、2児(小学生と幼稚園児)の父親でもあります。
そして親として、子供たちに健康の大切さを伝え、歯を大切にする習慣を自立的に身につけてほしいと願っています。

なぜならお口は「食べられる、話せる」からはじまり、「歩ける、話せる」にも影響し、また全身の病気や慢性疾患になるリスクも大きく変わってくるためです。
しかし、こんな大事なことを「どこからもきちんと教えてもらう機会がない」、これが日本の実情です。

仕事柄、私を知る人から「(自分の地域で)おすすめの歯科医院はないですか」「どうやって自分にあった歯科医院を選べばよいですか」といった相談を数知れず受けてきました。
そして、ほかにも同じような悩みを持っている人たちが大勢いるのではないかと思いました。

そこで、私のこれまでの経験値を含めた情報は、そのような方々のお役に立てるのではと思いこのサイトを立ち上げることにしました。
また、このサイトでは予防歯科の情報提供のあり方として、「患者の立場」を最も大切に考えています。

仕事では歯科医院の経営コンサルタントとして15年間で500件以上の歯科医院に関わってきました。
その中で、日本人の予防歯科(定期健診)への関心の低さが、常に課題としてありました。

予防歯科に通う習慣がある人とそうでない人とでは、人生における生活の質が全く違ってくることを医院に通う患者さんを通じて知りました。
なお、このサイトで医学的に正確な情報が必要な部分については、私が15年に渡って信頼を築いてきた歯科医師、歯科衛生士、医師の方々にご監修して頂いたり、引用元を明記した上で情報提供します。